工程会議

毎年、平均5件の介護施設を建設している。
建築現場では、毎週工程会議が建築現場所長と、設計士とで、開催されている。
昔は、新幹線、飛行機を乗り継いで、全国を旅していたが、今は、銀座からズーム参加。
楽といえば、楽だが、現場のスタッフとの懇親がないのは、やはり寂しい。
幾度も仕事を一緒にした設計事務所が多数あり、毎年、新しい施設を担当してもらっているが、施主のこちらの気心をわかってもらっているので、お互いに、楽だ。
珍しく、設計事務所と、ゼネコンが、銀座に説明にいらした。
何事かと思ったら、世界情勢の影響で、建築に必要な部品調達が遅れて、そのせいで、工事が遅れるかも知れないとの事。
1ヶ月でも、竣工が遅れれば、それに関して、行政認可も、銀行融資も事前に変更をお願いしなければならない。
入所予定も、見直す。
早く、新しい施設に入所することを望んでいる御本人にも、家族にも、迷惑がかかる。
そして、来年の4月1日開業の予定でいる、新卒新入職員の研修計画も変わる。
正直言って、その分の人件費は重い。
収入も、その期間分はなくなる。
資金計画は全面的に見直す必要があり、金融機関への説明も必要。
建設会社の努力で、遅れを未然に防げるかもしれないが、万が一の事を考えて、関係者に、事前相談をする事にした。
施設開設そのものの、工程を見直し、修正し、計画を変更するのである。
戦闘中の作戦を変更するに等しい。

管理者としての能力は、無駄のない工程表を作り、それに従って、全体を指揮運営する事だと思う。
分かり易く言えば、段取り良く仕事をするのだ。
土木工事を終えてから、鉄骨やコンクリートを発注する所長はいない。
完成までの資材は、工程に併せて工事現場に搬入されるように事前に発注してある。
職人の入れ込みも工程に併せて、人件費の無駄がないように。
全ての仕事は、全体工程を考えながら進めないと、仕事が、止まってしまう
職員の中には、机の上の書類だけに集中してしまい、それが終わってから次の連絡指示をする人がいる。
こういう人は、リーダーになれない。
部下、チームが先の仕事日程がわからず、迷惑する。
1人書類仕事に集中専念できる能力と、チーム全体の動きをつかみつつ、全体に指揮できるリーダーの資質は違う。
テニス選手と、アメフトのキャプテンとの違いだ。

母は、いつも、子供の為に一生懸命美味しい料理を作ってくれていたが、いつも、熱い鍋や、大皿が先に出てくる。
早く熱いうちにお食べと言われるのだが、箸も、スプーンもテーブルには出ていない。
慌てて、後から、ナイフやフォークが出てくる。
いつも、段取りが悪いなあと、子供ながら思っていた。
何事も、1人で仕事をするのが、好きな人だった。
今思うと、子供の私が、事前に、テーブル準びをしても良かったのだ。
私が、気の利かない家族だったのだなあと思う。

視野の狭い、上司を、気を効かしてサポートしてくれる部下がいて、初めて、良いチームになるのだろう
完璧なリーダーなど、いない。
勿論、都合の良い部下もいないのだけれど。

2022.11.15 湖山 泰成